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MPSとトリガー⑤

トリガーポイント・関連痛の例

①肩コリ関する部位
②肩関節周辺の部位(五十肩など)
③腰痛、臀部痛、坐骨神経痛に関する部位
④膝関節周辺の部位

①肩コリに関する部位

下図は胸鎖乳突筋のトリガーポイントと関連痛を示しています。この筋肉は首には痛みを出さず、顔面、頭部に痛みを放散します。鎖骨部のトリガーポイントは自律神経現症としてめまい、胸骨部のトリガーポイントは流涙、目の充血を起こすことがあります。

肩コリが長引いた場合や、むち打ち症などで頚部前方筋に負担がかかった場合は、下記部位の症状が出やすくなります。

下記は肩コリでも最も多いと考えられる僧帽筋です。肩コリであっても、頭痛や上肢痛がでる原因のひとつと考えられます。

下記は側頚部の深層にある斜角筋(前・中・後の3種類)です。とくに前斜角筋と中斜角筋の間を、上肢を支配する腕神経叢が通る場所でもあるので、下記のように上肢の症状を起こします。前方に上記の胸鎖乳突筋があるので、いろいろな症状が出やすい場所です。また、腕神経叢は下記の小胸筋周辺を走行するため、肩関節周辺の症状と絡み合うことも多いです。

②肩関節周辺の部位(五十肩など)

下図は棘上筋(上)と棘下筋(下)のトリガーポイントと関連痛を示しています。それぞれの筋肉は腱板とよばれている肩の回旋筋群に含まれています。いずれも肩から上肢にかけて痛みが出現します。

下記は胸板の筋肉の一部です。表面は大殿筋、その深層に小胸筋があります。さらに小胸筋と肋骨との間を腕神経叢や動脈が通るため、上肢のしびれ感や血行障害が起こりやすい場所です。胸郭出口症候群といわれる病態の一部は神経・動静脈周囲のfasciaによるものと考えられます。

下図は肩甲挙筋のトリガーポイントと関連痛を示しています。この筋肉はその名が示すとおり、肩甲骨を持ち上げる格好をしています。そのため常に負担のかかりやすい位置にあります。肩や肩甲骨周囲に痛みが出現します。棘上筋・棘下筋や肩甲挙筋は肩コリでよく起こる部位です。その表面にある僧帽筋との筋膜リリースを行うと改善することが多いです。肩コリでも眼精疲労を自覚したり、神経周囲のfasciaの異常から、頭痛(大・小後頭神経)、上肢痛・しびれ(腕神経叢)に広がりやすい部位でもあります。

③腰痛、臀部痛、坐骨神経痛に関する部位

下図は腰方形筋のトリガーポイントと関連痛を示しています。この筋肉は脊柱を起立させる筋肉の一部で、比較的深部に存在します。腹部臓器が近くにあるため、エコーガイド下での筋膜リリースでなければアプローチが必要な部位となります。腰部・殿部に関連痛が出現するため、坐骨神経痛と間違われることがあります。また、さら深層には大腰筋(腸腰筋の一部)があるため、ソケイ部に関連痛が出やすい部位になります。

下記は腸腰筋と呼ばれる筋です。腰椎前方から始まる大腰筋と骨盤(腸骨)内面から始まる腸骨筋とに分かれます。最終的には股関節の下方までつながります。体幹筋、コアマッスルといわれる部位のひとつで、姿勢の保持でも重要な役割を果たします。大腰筋は上記の腰方形筋の前方に位置するため、腰部痛からソケイ部、大腿前面部に症状が広がることが多いです。

下図はよく坐骨神経痛と間違えられやすい部位です。小殿筋(一番上)、梨状筋(上から2番目)、中殿筋(上から3番目)、大殿筋(一番下)のトリガーポイントとその関連痛を示しています。臀部だけでなく、下肢まで症状が広がります。腰部と臀部は同時に負担がかかることがほとんどなので、腰部や臀部とあわせて下肢まで症状が広がりやすい場所です。また梨状筋から下方は坐骨神経本幹が通るため、神経周囲のfasciaの異常がおこると膝から足趾までのピリピリ感・ビリビリ感を生じることもあります。MRI検査で椎間板ヘルニアがあると、このヘルニアが原因と間違えられることも多いです。神経根部での癒着が強いとヘルニアや狭窄による病変単独で下肢痛が出ますので、腰椎MRIでの鑑別は有用だと考えます。

下記図は仙腸関節を示しています。上にも出てきた腰部の傍脊柱筋群と殿筋群の連結部にあたるので、腰部痛や下肢痛を起こすことが多い部位です。単純に関節内だけでなく、靭帯部分(後仙腸靭帯や骨間靭帯など)のトリガーを起こすことが多いです。これについては、「その原因Xにあり!」(2017年2月17日放送)でも腰部痛の原因としても取り上げられています。

④膝関節周辺の部位

下図は大腿四頭筋(上:内側広筋、下:外側広筋)のトリガーポイントと関連痛を示しています。大腿四頭筋は太ももの前面にある大きな筋肉で、一部の筋肉は股関節・膝関節をまたぐため、負担がかかりやすく痛めやすい筋肉です。また、膝周囲に関連痛が出現しやすいため、膝関節の軟骨がすり減って痛んでいると間違われることが多いです。

下記はハムストリングスといわれる部位で、膝関節内側関節裂隙の下方まで及ぶため、膝内方の痛みの大きな原因要素になります。

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