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炎症と毛細血管

一般に蛋白質のような高分子物質は、毛細血管壁を自由に透過できないので、血管内の血漿のコロイド(膠質)浸透圧が生じ、それが毛細血管の内圧をなしています。
(血漿)浸透圧は、毛細血管において血管外の水分を血管内に引き込む力として作用しますが、これは血管内にアルブミンなどの血漿タンパクがあることで維持されています。
毛細血管後の細静脈の部分は血液の液体成分やコロイド状の物質が最も透過しやすい場所として知られています。

炎症と毛細血管
【イメージ】『毛細血管から出る量=毛細血管に戻る量』

炎症とは、腫脹・熱発・発赤・疼痛に機能障害を加えた5つの徴候が起こる障害です。
炎症が起こると、静脈や毛細血管の血管内皮細胞が収縮し、細胞間隙が開きます。これを血管透過性の亢進といいます。
微小循環による血管拡張により、この部位の血流量は増加し、血管内圧は上昇します。これらの要因により血管内の血漿成分は組織液側に漏れ出ていきます。これを滲出といいます。このため局所の浮腫を起こすのです。

炎症の現場では

炎症の起こっている局所の組織には多量の浸出液により水分が貯留し、腫脹を呈してしまいます。さらに血管内のアルブミンが広くなった細胞間隙を通って組織液側に流出します。これにより血漿膠質浸透圧が低下するため、多量の血漿成分が血管外に滲出してしまうのです。
炎症でみられる浸出液にサイトカインや抗体や補体が含まれ、局所での免疫反応はより促進されます。また、炎症でみられる局所的な熱発や発赤は微小循環系の血流量が増加することによって起こっています。
広範な炎症が起きている場合は、炎症局所で産生されるIL-1などの内因性発熱物質が視床下部の温度調節中枢を刺激し、全身性の発熱を呈します。炎症の化学伝達物質に含まれる、ヒスタミン、セロトニン、ブラジキニン、プロスタグランジンなどがあります。これらの物質が炎症局所で産生されると、神経のC線維末端にある自由神経終末が興奮し、これにより疼痛が生じます。

痛み刺激を感知する神経の末端を自由神経終末といい、ここには高閾値機械受容器とポリモーダル受容器が存在します。
侵害受容器には複数種類あり、通常は特異的な刺激に対して反応する。例えば刃物で切るとか針を刺すなどの刺激に対しては高閾値機械受容器、熱刺激に対しては熱受容器という具合です。
ところが機械的・熱・化学的刺激のいずれにも反応する受容器もあり、ポリモーダル受容器と呼ばれている。この受容器は皮膚だけでなく、内臓や運動器など、全身に広く分布しています。
痛みに関しては、主に高閾値受容器とポリモーダル受容器が関わります。高閾値機械受容器は侵害性の機械的刺激によって興奮し、Aδ(エーデルタ)線維によって侵害刺激情報を脊髄に伝えて一次痛(チクッとするような鋭い痛み)に関与します。例えば、壁に足の小指を思い切りぶつけたと同時に感じる痛みです(同時といっても、0.02~0.04秒ほどかかります)。ポリモーダル受容器は機械的刺激だけではなく、化学的刺激や熱刺激にも反応するほか非侵害刺激にも反応し、主にC(シー)線維によって様々な刺激情報を脊髄に伝えて、二次痛(ズゥーンとするような鈍い痛み)に関与しています。例えば、壁に足の小指を思い切りぶつけたあと、1~2秒後に感じる痛み(「痛み」と表現しないことも多い)です。
このように、末梢組織に存在する受容器によって痛みは感知され、末梢神経線維によって脊髄へと伝達されます。

炎症と毛細血管
【イラスト】ポリモーダル受容器。書籍「Fasciaリリースの基本と臨床 ハイドロリリースのすべて」より引用。

炎症と毛細血管
【イラスト】ポリモーダル受容器から痛みの伝達。書籍「Fasciaリリースの基本と臨床 ハイドロリリースのすべて」より引用。

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