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MPSとトリガー①

筋膜性疼痛症候群(MPS)とは

「筋膜性疼痛症候群(MPS:Myofascial Pain Syndrome)」とは筋肉間に存在する「筋膜(myofascia)」が原因になって痛みを引き起こす病気です。レントゲンやCTやMRIといった、整形外科でおなじみの検査では発見することができない、もしくは変形性の変化(年齢的変化)と診断(変形性関節症や変形性脊椎症など)されて経過観察となってしまうため、あまり耳慣れない病名だと思いますが、筋肉、筋膜(myofascia)および周囲の軟部組織にうずくような痛みやコリを主症状とする疼痛症候群をこのように呼んでいます。こういってしまうと特殊な感じがしますが、実は普段よくみられる、ありふれたものなのです。

長いあいだ原因不明の痛みとされてきましたが、最近はエコーの発達により、痛みの原因がわかるようになってきています。筋膜(myofascia)をエコーでみることで、明らかに厚くなっていたり、靭帯があつくなっていたりするところにピンポイントに圧痛があるケースが存在し、筋膜性疼痛症候群(MPS)の本態がわかってきました。

さらに運動器エコーの進歩によって画像がより精密になり、トリガーポイントは筋膜(myofascia)だけでなくFascia(ファシア)に存在することが分かり、またFascia(ファシア)の重積自体も鮮明に見るようになりました。また、生理食塩水を使ってFascia(ファシア)をリリースする方法(ハイドロリリース)が非常に効果的であるという事実も、広まってきています。

従来、筋膜(myofascia)の異常が原因で痛みやしびれを引き起こすものを筋膜性疼痛症候群(myofascial pain syndrome : MPS) と呼び、運動器疾患の原因として注目されてきました。しかし近年、痛みの原因は筋膜だけではなく、靱帯、支带、腱膜、関節包などの線維性の結合組織を含む「fascia」にあることがわかってきました。日本整形内科研究会(JNOS)では、MPSに代わる新しい概念として、FPS(ファシア疼痛症候群:fascial  pain syndrome )を提唱されています。

MPS:「筋肉間に存在する筋膜(myofascia)が原因になって痛みを引き起こす症候群」

FPS:「 fasciaの異常によって引き起こされる知覚症状、運動症状、および自律神経症状を呈する症候群」

筋肉に過度の負担がかかり、筋の緊張をきたし、血流が障害され痛みが発生すると考えられています。通常、筋肉は重いものを持ったりして痛めても数日~数週間すれば痛みは引いてきて回復したり、マッサージしたり温めたりすれば治ったり(いわゆる筋肉痛の状態)するものです。しかし、更に筋肉に過大な負荷や繰り返しの負荷が加わったり、ストレスがたまっていたりして血行が悪い状態ができていると話が変わってきます。『痛みの悪循環とは』参照。

本来であればfascia(ファシア)の働きによって、筋肉と筋肉の滑走はスムーズなのですが、その働きが阻害されるため、結果的に筋肉は弾力性を失い、痛みを起こす物質が局所にたまった状態となります。コリ固まった状態です。それがたまたま腰の筋肉で起こるとギックリ腰に、首肩の筋肉で起こると肩コリに、肩周囲の筋肉で起こると五十肩になります。もちろん、fascia以外の原因でも起こる可能性はあるので、レントゲンやCTやMRIが全く必要ないわけではありませんが、多くの痛みにはfascia由来のものが含まれていると言えるでしょう。  「腰痛の85%は原因不明(非特異的腰痛)だ」という表現は、色んなところで引用されています。これは、アメリカの家庭医(非整形外科医)が、腰痛を診た(初診)結果、整形外科医に紹介したのは全体の15%だったという論文から引用されたものとのことです。結構多いですね。もっとも、その15%にもfasciaによるものも含まれているでしょうし、逆に85%の中にも原因が同定でき得るものも含まれているとは思います。

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