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内科一般・呼吸器内科
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筋膜性疼痛症候群(MPS)の一般的な予防および治療法としては、適度な運動、ストレスの解消、マッサージ、薬物療法などがあります。しかし、症状が進行したものや慢性化したものに対しては、トリガーポイント(痛点)を中心に少量の局所麻酔薬を注射し、過敏化した受容器由来の、過剰な痛みの信号(日常生活にとっては、もはや不要とも言える余分な痛み信号)が脳に伝わるのを防ぐ、トリガーポイント注射と呼ばれる治療が基本となり、当院でもよく用いる治療法のひとつです。
ブロックは、痛みを感じている部位を一時的に抑えてしまう治療です。ブロックをすることで、結果的に痛みを感じている部分の交感神経の興奮を抑え、結果的に血管を広げ、血流を改善させます。血流が良くなると、患部に十分、酸素が行き渡り、患部に滞っている痛み物質も洗い流してくれます。痛み物質が綺麗に流れ去り、組織の回復が促されると、筋肉・神経にとっては一時的なブロックであっても、その後、痛みが戻ってきません。不要な痛みを速やかに治療して「痛みの悪循環」を断ち切り、血行の改善を促進し、組織の酸欠状態を回復させることによって自らの治癒力を引き出すのがこの治療をする最大の目的です。
症状が軽ければ1回の治療でも効果がある場合がありますが、症状が重い場合は複数回に渡って治療をします。さらに長期に渡って痛みを感じていた場合は、痛みの信号が脳に連続して入った事により痛みに対する脳の機能が過敏になっているので、脳の動きを抑える薬(主には安定剤や抗うつ薬など)を併用するとより効果的です。ただし、他疾患の2次的症状による筋膜性疼痛の場合、原因疾患の治療が優先される事は言うまでもありません。
最近、長引く腰痛などの慢性の痛みの原因が脳の異常にあり、その治療法として認知行動療法が効果的であると言われています。治療にはトリガーポイント注射を行う以外にも、患者さんに対して「認知行動療法」を行う必要があると考えています。トリガーポイントは再発することもあります。患者さんにも痛みの原因が筋膜にあることを知ってもらい、日常の行動に変化を与えるようにすることができれば、患者さんが自分自身で痛みの状態をチェック・改善することができるようになるのではないのでしょうか。トリガーポイント注射や筋膜リリースを受けるだけでは、また再発することがあります。そのため、日々の散歩やラジオ体操などの軽い運動が重要です。
また逆に、極端に使い過ぎた筋肉や、日常的に負担がかかっている筋肉があるかどうかを、ご自身でチェックして改善していただくことも重要です。必要以上に腰痛を恐れる必要がないとも言われています。認知行動療法というのは、一般的には認知に働きかけて気持ちを楽にする精神療法(心理療法)の一種です。そして認知というのは、ものの受け取り方や考え方という意味です。
最終的に痛みを感じるのは脳ですが、最も頻度の多いfascia(ファシア)の異常による痛みが、医療者の間でもまだまだ知られていません。
「ヘルニアや骨棘が神経に接触しているので痛みがある」「今は、手術するほどでもない」「いずれ歩けなくなるかもしれない」
このようなネガティブキャンペーンのような言葉を聞いて、不安や恐怖を感じない人はいません。医学的に間違った内容ではないにせよ、医者と患者それぞれの把握している情報量に大きな隔たりがあるため、結果として必要以上に安静にし、行動を制限してしまう人が多く見られます。
このほかに重要なことは、トリガーポイントによるものでない「本物の神経痛」を除外することです。本物の神経障害は、日内変動(一日のうちに症状が変動すること)がなく、姿勢や動作によって痛みの程度が変わりません。
また必ず神経の機能低下が持続的に見られます。神経の機能低下とは、運動神経の機能低下による麻痺、感覚神経の低下による知覚低下、膀胱直腸障害などです。 レントゲン写真、MRIなどの従来の画像所見と痛みが関連しないことは、すでに多くの研究で証明されています。もちろん、手術してよくなった患者もたくさんいます。
しかし、手術は上手くいったが痛みのとれない患者がいると、今度はすべて脳のせいということになっているのです。「fasciaによる痛みを忘れていませんか?」です。
≪参考≫
加茂整形外科 http://www.tvk.ne.jp/~junkamo/
心療整形外科 https://junk2004.exblog.jp/
一般向けの本です。構造異常が痛みの原因でないと、整形外科医療に一石を投じた、パイオニア的な偉大な本だと認識しています。
≪参考≫トリガーポイントブロックに用いる麻酔薬