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【動注治療】なぜチエナム?

この治療で用いる薬剤は「チエナム(イミペネム水和物」」という薬剤で、数十年前から「抗生物質」として認可が下りているものです。もともと抗生物質でできている粒子を流すので、非常に安全です。
血管を減らすことが目的なのに、どうして細菌を退治する抗生物質を使うのでしょうか? 実はこの薬の結晶は非常に「溶けにくい」ことで有名です。溶けにくいために、少量の液体と混ぜると、小さな結晶が凝集した「粒子」になります。

【イラスト】チエナム点滴静注用。少量の生理食塩水とまぜて使用します。この状態では、溶解しておらず、結晶が凝集した粒子の状態となり、沈殿します。注入時は撹拌して均一の状態にして使用しますが、まだ粒子は残っており、完全には溶解していません。

この粒子を流れの速い動脈に注入すると、細かい血管のところで「詰まり」ます。モヤモヤ血管があるところでこの薬を流すと、異常な血管のところに集まってくれるのです。これにより、異常な血管は血液の流れが悪くなり、ダメージを受けることになります。では、正常な血管にはどう作用するのでしょうか?正常な血管にもダメージを与えてしまい、「壊死」や「損傷」などの怖いことが起きてしまわないのでしょうか?結論としては、その心配はありません。オクノクリニックでは今までに5,000人以上の患者さんが「イミペネム」の粒子による治療を受けていますが、「壊死」や「損傷」といったことが生じたことは1例もありません。

なぜでしょうか。病的に誘導された異常な血管の構造は未熟で脆弱です。簡単にいうと「血管としての経験」が浅く、トラブルに対応する能力が低いといえます。一方で、正常な血管は生まれた時から存在しており、すこし流れが滞っても、血管を拡張させることで再び血液が流れるようになる(再開通させる)仕組みがあるのです。モヤモヤ血管では状況に応じて拡張させるような機能はない(むしろ新生時から拡張しきっている状態である)ため、当分の間は再開通しません。

このため正常な血管では再開通して血液の流れが保たれるのに対し、異常な血管にはきちんとダメージを与えることができる、非常に安全性が高い優れた薬剤なのです。

なぜチエナム
【表】正常な毛細血管とモヤモヤ血管の比較まとめ

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